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1970年に初めて「アースデイ」が宣言されてから11年後に、グレートバリアリーフが世界自然遺産に登録され、法的にも保護されてきましたが、今日、地球温暖化や気候変動によって、この自然の遺産が困難な状況に直面していることを受け、2,300キロにおよぶ世界最大のサンゴ礁群をこれからの世代にも残すために、観光業と科学に携わる何千もの人々が保護活動に取り組んでいます。
特にクイーンズランド州の観光地、ツアー会社では、海外からの観光客がいない中での取り組みとして、さまざまな活動に参加してサンゴの保護に貢献しています。
フィッツロイ島を本拠地とするリーフ再生基金によるサンゴ育成プログラムでは、沖合での苗付けによって育ったサンゴをサンゴ礁に移植する作業が科学者、ボランティアによって行われていて、その活動を支援する寄付も受け付けているほか、クイックシルバー・クルーズでは自社のポンツーン(浮島)があるエイジンコート・リーフにて、成長を促すために電流を流してサンゴの育成を早めるという、科学的なサンゴ礁リハビリテーションプログラムを実施し、ツアー参加者がその作業の様子をシュノーケリング中に観察できるようになっています。
さらに、グリーン島でも2020年11月から始められたサンゴ礁再生プログラムによって苗床に植えられたサンゴを1年から3年をかけて十分な大きさに成長するまで監視するなど、各地、各社にてサンゴ再生に向けての取り組みが行われています。
エコツアーでサンゴの健康状態を調査, Passions of Paradise
そしてこの度、業界では初めてとなる一般ダイバーも保護活動に参加出来るエコツアーがスタートしました。ケアンズのツアー会社「パッション・オブ・パラダイス」が催行する、ライセンスのある経験豊富なダイバー向けのこの1日ツアーでは、豪華カタマランでアウター・グレートバリアリーフ2カ所のポイントで2回のダイビングをしながら、マスターリーフガイドの指導の下、サンゴや海洋生物の健康状態を調査。参加者は、"Eye on the Reef "の目撃情報ネットワークへの投稿とグレートバリアリーフ海洋公園局への報告書作成を通じて、環境保護に寄与することが出来るほか、パッションズ・オブ・パラダイスが参加している、シドニー工科大学監修の「サンゴ育成プログラム」の一環として行われているサンゴの苗付けも見ることが出来ます。
エコツアーで海洋生物の健康状態を調査, Passions of Paradise
気候変動や環境破壊など地球上のあらゆる問題に対して意味ある行動を起こし、世界規模で地球を守ることを目指すアースデイ(EARTHDAY.ORGサイトから)。弊局では、同じ地球に棲む野生生物の保護も地球環境を守ることと考えます。
昨年3月にピンク色のマンタが撮影され話題となったグレートバリアリーフの南部にあるレディ・エリオット島で、先月ウシバナエイ(Cownose Ray)の大群が泳ぐ姿が撮影されました。発見者は、レディ・エリオット島のマスターリーフガイド、ジャシンタ・シャックルトンさん。レディ・エリオット島の沖合でシュノーケリング中にこの大群と出会い、動画と写真の撮影に成功しました。このウシバナエイはIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでデータ不足とされているため、生態があまり知られていないため、今回撮影されたものは希少な記録として今後の研究にいかされます。
レディ・エリオット島には、1200種を超える海洋生物が生息しており、ウミガメやマンタと泳ぐことが出来るダイビングスポットとしても有名ですが、希少生物や現象の目撃情報が近年増加しています。
Cownose rays off Lady Elliot Island @jacintashackleton
実はこのレディ・エリオット島、19世紀からグアノ(肥料となる海鳥のふんなどが堆積したもの)の採掘所として、島全体および周辺のサンゴ礁の地盤に至るまで掘り起こされていた歴史があります。そのような環境にあった島を、世界でも有数のエコツーリズムリゾートに再生させたのが、2005年から島の総支配人を務めるピーター・ガッシュ氏。環境にやさしいエコロジー施策の導入と多くの観光客を呼び込んだ功績が評価されて、2020年にはOAM(オーストラリアの勲章メダル)を受賞しています。
島では、2008年にグレートバリアリーフでは初となる太陽光発電ハイブリッド蓄電システムを導入しているほか、逆浸透脱塩プラントを建設して、島の飲料水を供給出来るようになりました。このほか、持続可能な島であるように、食品廃棄物の堆肥化や島内の植生回復、プラスチックの販売禁止など、常にエコツーリズムを追求しています。
Lady Elliot Island