How-to
By Chelsea Tromans
世界中のサンゴ礁と同様、グレートバリアリーフも危機に直面しています。地球温暖化、暴風による被害、オニヒトデ(Crown-Of-Thorns Starfish - COTS)の大量発生、海水汚染と、近年見られるさまざまな現象がサンゴ礁に悪影響を与え続けています。しかし、これらによる影響を受けていても、世界最大の生命体は今も素晴らしい姿を残して生きているだけでなく、成長し続けています。
また、この世界最大のサンゴ礁は世界でも特に管理が徹底されていて、海洋公園・観光の各団体による教育プログラムやプラスチック汚染の規制、COTSの根絶、サンゴの育成、再生エネルギー開発、区域内の管理などのプロジェクトが行われています。
一方、私達にも、実際に訪れなくてもグレートバリアリーフを守るために出来ることはいろいろとあります。
ここでは、これから先の世代までグレートバリアリーフを守るために、あなたが出来ることをご紹介します。
一般的な認識とは異なり、グレートバリアリーフを訪れることは良いことなんです。というのも、全ての訪問者は環境管理税(通称リーフ・タックス)を払わなければならず、それはグレートバリアリーフの日々の管理や保護に役立てられています。また、実際に見事なグレートバリアリーフのサンゴ礁を見れば、それを守りたいと思う気持ちもさらに強くなりますよね。
グレートバリアリーフへはケアンズなど主な観光地からでも日帰りで訪れることは出来ますが、せっかくなら、どこかエコリゾートに泊まってみたくなりますね。エコリゾートでは、グレートバリアリーフおよび敷地内での二酸化炭素排出量の削減に努めています。
特に世界でも環境保護における先駆者的存在として知られ、エコツーリズムを追求しているのがレディ・エリオット島です。クイーンズランド州では2021年9月1日から持ち帰り用などに使用される使い捨てプラスチック使用を禁止する法律が施行されましたが、レディ・エリオット島では2012年から使い捨てプラスチックを使用しない取り組みが行われているほか、島へのアクセスのための飛行で排出される二酸化炭素を100%島内で相殺し、実質上ゼロにしています。
ウィットサンデー諸島のひとつ、ロング島の南端にあるエリシアン・リトリートは、島内のエネルギーを全て自給している大人のためのリゾートです。この島では、食品廃棄物の堆肥化、島内でのフルーツ、野菜の栽培、最低限のプラスチック使用のほか、使い捨てプラスチックを使用しないようにするなど、環境のための数多くの対策が行われています。
エリシアン・リトリートの姉妹リゾートであるパンプキン島も環境に配慮し、風力と太陽光による発電のみのエネルギーを使用するリゾートです。また、島内では生分解性の清掃用製品のみを使用し、ゲスト用のアメニティもバイロン・ベイで生産されたオーガニックのものが使われています。
知識は力なり。グレートバリアリーフのアウターリーフへ向かうツアーのボートには海洋学の専門家も乗船しているので、例えば、サンラバー・リーフ・クルーズのツアーに参加した際には、せっかくですので、どんどん質問してみましょう。
グレートバリアリーフについて学ぶなら、リーフ・ティーチもおすすめです。夕方2時間にわたって行われるセミナーでは、サンゴ礁がどのように形成されるのか、軟質、硬質サンゴの違い、魚の見分け方など、グレートバリアリーフのあらゆることについて学ぶことが出来ます。
タウンズビルにあるリーフHQを訪れれば、グレートバリアリーフについてさらに多くのことが学べますよ。ここは研修センターを兼ねた水族館で、館内では、水族館にあるものとしては世界最大の生きたサンゴ礁が飼育されています。毎年サンゴの産卵も見られるんです。また、複雑かつ多種多様の生物が生息する様子や、グレートバリアリーフが直面するさまざまな脅威、科学者達がどのような保護活動を行っているかなど、溢れんばかりの情報が分かりやすく展示されています。
Photo by @ladymusgraveexperience
気候変動はグレートバリアリーフ最大の脅威です。温室効果ガスが急速に増加すると海水温が上昇し、サンゴや海洋生物が生息出来なくなっています。ただ、二酸化炭素の排出量を相殺するような旅をすることによって、車、バス、飛行機、ほかあらゆる移動手段による旅行によって排出される二酸化炭素の影響については埋め合わせが出来ます。非営利団体であるグリーンフリートによる自生の多種多様な植物の植林も、排出される二酸化炭素を吸収するためのプログラムで、気候変動を食い止めるための環境づくりにつながる活動です。
グレートバリアリーフをエコに観光する最も良い方法はツアーに参加することです。地元のガイドからグレートバリアリーフについて学べるだけでなく、団体ツアーで観光することによって、二酸化炭素の排出量をより抑えることが出来ます。エコ認定の観光業者によるツアーに参加したり、よりエコな移動手段を使えば、さらに排出量も少なくなります。
お泊りの施設では、節水、洗剤の使用量を最小限にするために、使用するタオルの枚数を出来るだけ少なくし、客室を出る際には電気、エアコンなどの電源を消し、省エネを心がけるようにしましょう。
グレートバリアリーフではそのすばらしさを海中、上空から楽しんでいただけるのですが、その際には必ず指定のエリア、ルートに限って観光する必要があります。ルートを外れてしまうと、絶滅危惧の植物に被害が及んだり、さらに浸食が進むことにつながります。
「アイ・オン・ザ・リーフ(Eye on the Reef)」や「コーラル・ウォッチ(Coral Watch)」、「リーフサーチ(REEFSearch)」での、グレートバリアリーフのサンゴの健康状態を監視するお手伝いなど、一般市民が参加出来るプロジェクトがいくつかあります。
「リーフサーチ」に登録すると、グレートバリアリーフのサンゴの健康状態を研究している専門家にどのようにして貴重なデータを提供することが出来るかを説明しているフィールドガイドが送られてきます。1回10分のダイビング、シュノーケリング、またはリーフ・ウォークで主な種のサンゴを探し、その状態を確認して、ごみなどが見つかれば、それも記録をするというものです。
一方、「コーラル・ウォッチ」は白化現象に焦点をあてて調査をするもので、クイーンズランド大学によって運営されています。専用のキットの色分けされたスレートに、サンゴの色を記録していきます。その後、アプリに情報をアップすることによって、世界で共有されるデータベースに保存されるようになっています。
グレートバリアリーフ海洋公園局が運営する「アイ・オン・ザ・リーフ」は、専用アプリをダウンロードまたはオンラインでログインをして、実際に発見したものを直接報告出来るようになっています。報告内容としては、白化現象、オニヒトデ、瀕死または病気の野生生物、サンゴの損傷など、プロジェクト参加者が必要と判断したこと何でも報告出来ます。
まだオーストラリアへの渡航は未だ叶いませんが、それでもグレートバリアリーフの保護に貢献することは出来ます。グレートバリアリーフ・リサーチ基金(The Great Barrier Reef Research Foundation)、リーフ・レインフォレスト・リサーチ・センター(The Reef Rainforest Research Centre)、シチズンズ・オブ・ザ・グレートバリアリーフ(Citizens of The Great Barrier Reef)は現在、州内で進められているプロジェクトで、クラウドファンディングによって基金を募っていて、その全額がグレートバリアリーフの保護に使われています。
寄付するだけでなく、もっと何かに携わりたいという方は、シチズン・オブ・ザ・グレートバリアリーフのメンバーになると、グレートバリアリーフの保護に協力する、という同じ目的を持った世界中の人々とのつながりが持てるようになります。まず、登録をして、自らの色を選んで、以下のような、実際に実行する行動を選びます。
· Bring your own bagマイバッグを持参する
· Bring your own bottleマイボトルを持参する
· Say no to strawsストローは要らないと伝える
· Don’t leave leftovers食べ残しをそのまま置いていかない
· Carry your own cupマイカップを持ち歩く
· Sponsor a COTS diverオニヒトデ駆除ダイバーを支援する
海を守るいちばん手っ取り早い方法は、ビーチや海にあるプラスチックを拾うことです。海洋には1平方キロメートルごとに4万個ものプラスチックごみが浮いていると言われています。
タンガロア・ブルー基金(The Tangaroa Blue Foundation)は、オーストラリア全土で活動をしている非営利団体で、海洋ごみの除去、防止を目的としています。この団体では、連邦政府の支援で、ビーチを清掃する「リーフ・クリーン(ReefClean)」を実施していて、市民が参加出来る場を提供しています。
Photo by @bumblebeewraps
グレートバリアリーフを守るために協力しようとする心がけ(そして身の回りの環境への配慮)は自宅から始まります。日々の生活の中でのちょっとした心がけが、サンゴ礁を守るきっかけとなります。ここからは、エコ意識を高めるために、身近で出来ることをご紹介しましょう。
2018年クイーンズランド州では、小売店での使い捨てのプラスチック袋の提供を禁止し、その年、プラスチックごみの70%削減を実現しました。今後、さらに削減をするためには、包装にプラスチックが使われていない商品を買うようにし、ストローは要らないと伝え、テイクアウェイではなく店内で飲食するようにするなどの心がけが必要です。
使い捨てのコーヒーカップも、通りや水路で多く見られるごみで、街のごみ処理の大きな負担となっていることから、カフェでは再利用出来るマイカップを持参するようにしましょう。
美容製品の包装には過剰すぎるほどのプラスチックが使われていますが、環境、具体的には海や海洋生物に及ぼす悪影響はそれだけではありません。
角質除去の製品の中にはプラスチック粒子(マイクロビーズ)を含むものがあり、その粒子がとても細かいため、排水処理システムでも取り切れずに海に流れてしまいます。粒子はそれ以上分解されず、海水に含まれる有害成分を吸収し、最終的には海洋生物に食べられ、いずれそれを食べた魚が死ぬことになります。現在、マイクロビーズは世界中でその使用が広く禁止されるようになりましたが、スクラブ製品を買う際にはぜひ原材料に注意して、ホホバエステルやコーヒーかすなどの生分解性の角質除去代替物質を使ったものを選ぶようにしてください。
海辺や海で過ごす際に日焼け止めを塗ることは、皮膚がんを防ぐための習慣となっていますが、ケミカルの日焼け止めに含まれるUVフィルターが海水に洗い落とされると、海洋生物やサンゴの有害となりうるのです。オキシベンゾンやオクチノキサートのような成分は、サンゴの白化現象と関連があるとされています。ですので、サンゴにやさしい日焼け止めを探してみてください。オーストラリアのスキン・ケア製品であれば、Sukin(スーキン)、endota(エンドータ)、Wotnot(ウォットノット)などのブランドは全てサンゴ礁にも安全な成分を使っています。
太陽光エネルギーはクリーンで再生可能、長い目で見れば節約型のエネルギーですので、自宅での発電にソーラーパネルの利用を考えてみてください。
また家庭菜園をすることによって食べ残しを減らしましょう。清掃用やガーデニング用製品についても、ケミカルフリーのものを使うようにしましょう。
レディ・エリオット・アイランド・エコリゾートのピーター・ガッシュ氏は、この小さな島の動植物の再生を見事に成し遂げた第一人者で、島内での再生エネルギー開発にも尽力しています。
マンタが多く見られるスポットとしても知られるこの島は、昔、鉱物の開発によって一旦は自然が壊滅状態となりましたが、今では巣作りをする海鳥が何千羽も訪れるようになりました。また、島内で必要なエネルギーの80%以上は太陽光と蓄電池システムによって供給されています。
リビー・エッジ氏が運営する非営利団体エコ・バージ・クリーン・シーズ(Eco Barge Clean Seas)のプログラムでは、海洋生物の生命を守るために、およそ10年前からウィットサンデー諸島からプラスチックごみを取り除く活動を行っています。また、州北部地域におけるごみの削減のために、地元の人々への周知活動も進められています。
ウェンディ―・モリス氏はザ・リーフ・ソサエティ(The Reef Society)を創設し、アート、写真、衣類を通してグレートバリアリーフに生息する生物のストーリーを発信しています。また、グレートバリアリーフに関する海洋学的な情報案内を商業的に提供する初の企業であるリーフ・バイオサーチ(Reef Biosearch)も立ち上げ、エコ・ツーリズム運営の先駆けとなりました。
コル・マッケンジー氏率いる海洋公園観光オペレーター(Association of Marine Park Tourism Operators - AMPTO)では、グレートバリアリーフの管理運営を行っています。マッケンジー氏とその妻マギーはオニヒトデ駆除の活動も行っていて、1990年代からグレートバリアリーフの保護のために夫妻で取り組んでいます。
グレートバリアリーフを守るために設立された最も新しいプログラムが、アースアワー創設者であるアンディー・リドリー氏率いるシチズンズ・オブ・ザ・グレートバリアリーフ(Citizens of The Great Barrier Reef)です。これは、グレートバリアリーフを守るという目的の下、地球上の人々がひとつになることを目指しています。